屋根裏部屋の美術館

絵画分類

 初めに

 非常に暗い絵画、気分的に明るい絵画および幻覚のような絵画を描いた画家の履歴を調べると、あることが分かる。それは、その画家が精神疾患を患っていた可能性が高いということである。
 ここでは、それらの絵画を一覧で示した。
 ただし、当美術館「屋根裏部屋の美術館」が所蔵しているものは、このうちの約半数だけである。 


 非常に暗い絵画、気分的に明るい絵画および幻覚のような絵画

  
離人症の症状に、「自己に関する知覚あるいは体験の変容、その結果自分自身の現実についての感じが一時的に失われるか変化する。自分の手足の大きさが違って感じられたり、自分が機械仕掛けのように感じられたり、まるで闇の中にいるように感じたりする」、「なかには、ものが大きく見える(大視症)、小さく見える(小視症)、ゆがんで見える、遠くに見える、生々しく見える、かすんで見える、など多彩です。患者の陳述によっては幻視に近いものもあります」とある。
 また、統合失調症の症状に、幻覚・妄想・思考障害などの陽性症状、感情障害・会話不能・社会的引きこもりなどの陰性反応がある。

 ここでは、非常に暗い絵画、ぼやけた輪郭の絵画、非常に立体的な絵画、幻視に近い絵画、幻想的な絵画を一覧にした。

離人症的絵画
鬱的絵画
悟り(陽転) 統合失調症的絵画
超立体・幻視
躁的絵画
幻想的絵画
  林武
  佐伯米子
  萬鐵五郎
 朝井閑右衛門
  梅原龍三郎
  古沢岩美
  村上肥出夫
  全和凰
  緑川廣太郎
  依岡慶樹

  中川力

香月泰男


 ストレス、行動、性格

 精神疾患はストレスが大きく関与する。
 ストレスの強さは、脳の発育時期と相関する。胎児期、幼児期、小児期には脳はストレスに強い影響を受ける。胎児期における母親の飲酒等については胎児の脳に強い影響を与えることは確かである。しかし、履歴からでは、母親の飲酒等についてはわからないが、幼少期の家庭環境はある程度は分かる。
 また、双極性障害(躁鬱病)と性格は非常に関連がある。同様に統合失調症(分裂病)にみられる性格というものもある。
 そして、精神に問題がある人がとる行動(奇行、放浪、社会的ひここもり)というものもある。

 また、「生命の危機といえる状態を体験した人の約3分の1に一過性の離人症候群と言うものが生じる。そして、この生命の危機といえる状態を体験した人に生じる離人症的体験と精神科入院患者に見られる離人症的体験は本質的には同じものである」(ノイス医師 米国)とある。「生命の危機にさらされる」ということは大きなストレスである。これは、明治、大正時代では結核になるということ、また、戦争で過酷な体験をしたということが該当する。
 
画家名 問題とされるストレスおよび行動等
  林武 幼少期に問題となる家庭環境
悟りがあった
幻聴・幻視があった
自殺を考えたことがあった
統合失調症患者にみられる性格
  佐伯米子 佐伯祐三の兄の裏切り?
夫・娘の殺害?
贋作作り(偽のサイン)
  萬鐵五郎 幼少期に母親を亡くす。祖父に溺愛されて育つ  
二十歳頃に奇行
二十歳頃に結核
長期間苦悩(作風で悩む)→社会的引きこもり
娘の死後、非常に大きな精神的落胆
双極性障害患者にみられる性格
  朝井閑右衛門 幼児期における猫殺し
社会的ひきこもり
双極性障害患者に見られる行動
統合失調症患者にみられる性格
  梅原龍三郎 幼少期に母親を亡くす。父と義母ゆきとに溺愛されて育つ
長期間苦悩(作風で悩む)→社会的引きこもり
死への願望
双極性障害患者にみられる性格
  古沢岩美 幼少期に母親を亡くす。
過酷な戦争体験
「アトリエで一人で夜中にやっていますから、その場面で回虫が目から飛び出しているものもありますし、それから、コレラで死んだものもありますが、それがフッと出てくるんです」→幻覚
長期間蟄居状態→社会的引きこもり
  村上肥出夫 長期間放浪
二度の火災後、精神を患い、長期間入院
対人恐怖症?
  全和凰 精神的修行(精神的問題があったから?)
  緑川廣太郎 幼少期に母親を亡くす
  依岡慶樹 本人が死を意識するほどの病気(腎臓)
病気から回復した後、爆発するような感覚を持った
  中川力 東京で一匹の猿に出会ってから芸術開眼をひきだされた→悟り(?)があった
孤高の境に身を置いて大自然と相対し、独自の晴朗な画境を切り開いた→社会的引きこもり
  香月泰男 幼少期に母親と別れる
長期間のスランプ  
シベリア抑留という大きなストレス
娘の死後、非常に大きな精神的落胆
過度の飲酒

 顔と筆跡

 精神疾患の多くはストレスにより発症する。ストレスは顔の表情を変える。
 ここで取り上げた画家達の表情には、苦悩が刻み込まれている。

 筆跡は性格を表す。やや特殊な筆跡であることは確かである。

写真、自画像 筆跡
  林武

  佐伯米子

  萬鐵五郎
  朝井閑右衛門
梅原龍三郎
  村上肥出夫
  全和凰
  緑川廣太郎
  中川力
  香月泰男


 終わりに

 上記画家は、油彩画画家ベスト200位に入る人である。そのため、美術館学芸員の方々はこのような変わった絵画を見ても何も感じなかったと考える。
 斬新な絵画とでも思っただけなのだろうか。美術に疎い私には、問題のある絵画としか思えない。そして、履歴等を調べたら、なにか問題となるようなものがあった。私は、画家には精神的な問題、つまり精神疾患があったと考える。

    
  

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