森省一郎 家の中を覗くと


 はじめに

 当美術館「屋根裏部屋の美術館」所蔵する森省一郎の作品「家」(1963年)および作品「Conscience(自登)」(1971年)を紹介する。
 

 森省一郎 

 孤高の洋画家。現代美術の礎を築く。

 「出会いは35年前、第四回パリ青年ビエンナーレでグランプリでグランプリに輝いた森さんが国際美術界に華々しくデビューした頃です。マルロー(当時の仏・文化大臣)が高く評価した彼の才能は世界中から注目されていました。その後、パリ郊外にあった彼のアトリエに隣接したソルボンヌ大学工学部で電子顕微鏡を覗いたのがきっかけで「遺伝子」のとりこになったようで、それ以来、全霊を傾けてこのテーマと取り組んでいた訳です。今回、拝見した遺伝子シリーズはすばらしい大作で、ひょうたん形の無限個の遺伝子が生き生きと永遠の躍動を続けている様子を充実したタッチで描いています。抽象と具象を超え、まさに未曾有のモチーフに挑戦し、ひたすらテーマに追求し続けた末にまったく新しい表現領域を開拓しています。森さんの着想と努力の成果に心から感服します。」(「未曾有の表現領域を開拓」大原美術館館長小倉忠夫/「森省一郎の世界」Team Mori Shouichiro発信する会、市川昇・宮原早苗)




 作品「家」(1963年、屋根裏部屋の美術館蔵)




 作品「Conscience」(1965年、7回現代日本美術展出品作、東京国立近代美術館蔵)




 作品「記録V」(1965年、国際芸術見本市ジャパン・アート・フェスティバル出品作)




 作品「Conscience(自登)」(1971年、屋根裏部屋の美術館蔵)




 終わりに

 作品「家」は、森省一郎が活躍していた絶頂期に制作されたものである。
 人は雲、壁のしみを見て、いろいろなものを想像することがある。
 それと同様に、森省一郎は、光学顕微鏡で細胞などを見たとき、また、電子顕微鏡で遺伝子などを見たとき、いろいろなものを想像し、多くの作品を作り出した。
 ここで紹介した作品「家」(1963年)はそれらと異なり、空と家を見たとき感じた妄想といえるものを描いたのである。

 家の回りには、何かおかしな雰囲気がある。そして、家の屋根、壁、窓もどこか違う。
 家の中でも、何かいろいろなことが起きている。

 このような妄想が描かれている。

 豊かな想像力と妄想は、隣り合わせているのだろうか?


 履歴

1936年 鹿児島県に生まれる。 
1961年 独立美術協会展29回展独立賞を受賞。
1962年 独立美術協会展30回展 独立賞、須田賞、30周年賞を受賞。
1963年 サンパウロ・ビェンナーレ出品。 
1965年 第4回パリ青年ビエンナーレ 外国人作家最優秀賞を受賞。
1966年 第7回現代日本美術展優秀賞を受賞。第1回ジャパン・アート・フェスティバル出品。
1984-95年 フランスナント市のアトリエに籠もり、「遺伝子シリーズ」の創作活動に没頭。


 画集

 「画集 遺伝子は踊る」(森省一郎著、廣済堂出版)
 :細胞質流動の躍動感、染色体が織りなす精緻な縞模様、初めて顕微鏡で見たときの感動がよみがえる。 (「BOOK」データベースより)  激しく行き交う細胞質流動の躍動感、遺伝子を包む染色体が織りなす精緻な縞模様。絵画にとって未曽有の「遺伝子」というモティーフに挑戦した作品の数々を収録する。(「MARC」データベースより)


 主な収蔵美術館


東京近代美術館
京都近代美術館
神奈川県立近代美術館
彫刻の森美術館
京セラ美術館
バーゼル美術館
シカゴ美術館
サンパウロ現代美術館

 参考文献

「画集 遺伝子は踊る」(森省一郎著、廣済堂出版)

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