鈴木信太郎 色彩の旅人


 はじめに

 当美術館「屋根裏部屋の美術館」が所蔵する鈴木信太郎「花」(2作品)および「ぶどうの皿など」を紹介する。
 ダイナミックに描かれている作品とオーソドックスにまとめられた作品の2種類であるが、穏やかな色彩という点は共通している。
 その静物画3作品は、よく知られている風景画などとはひと味違ったものである。
 

 鈴木信太郎

 鈴木信太郎は、病気のために身体が不自由になり、つえや車椅子を必要とする生活をおくりながらも、各地に赴き、優れた風景画を生み出した。また、童心あふれる絵画も数多く制作した。

 


 鈴木信太郎「花」2作品(初期絵画、古物美術商物故堂取扱、屋根裏部屋の美術館蔵)





 作品解説

 この作品は、ダイナミックに描かれているもので、このダイナミックさは彼の作品では数少ないものである。


 鈴木信太郎「ぶどうの皿など」(東京美術倶楽部鑑定証書付き、ギャルリー ル・シエルー GLC取扱、屋根裏部屋の美術館蔵)



 作品解説

 この作品は、セザンヌの影響が強く出ているものであり、非常にオーソドックスに描かれている。


 作品「緑の構図」(そごう美術館蔵)



 作品解説

 この作品は、思い出を描いたものである。鈴木信太郎は、病気のために身体が不自由になり、松葉杖や車いすを用いる生活を送った。ここには、人が描かれていないが、寂しさを感じるものではない。穏やかな色彩がそれを感じさせる。


 終わりに

 思い出は、いつの日でもよみがえることが出来る。それは、穏やかなものか、寂しく悲しいものかは、幼少期の環境にある。
 年老いても、楽しかった思いでは、時を旅するようによみがえる。
 しかし、その背景を知ると作品「緑の園」などは少しだけ悲しさを感じる。
 


 履歴

 二科会や一陽会を舞台に、昭和を代表する洋画家として活躍。
 東京八王子の生糸業を営む裕福な商家に生れ、跡取り息子として育てられるが病気のために身体が不自由になり、好きな絵画の道へと歩む。


1895年 東京都八王子に生まれる。
1910年 白馬会研究所で黒田清輝に師事。織物図案の仕事に従事。
1916年 文展に入選する。
1922年 二科展に入選する。石井柏亭に師事。
1926年 二科展で樗牛賞受賞。
1936年 二科会会員となる。
1950年 武蔵野美術大学教授。
1953年 多摩美術大学教授。
1955年 二科会を退会して一陽会を結成し中心的存在として活躍する。
1960年 日本芸術院賞受賞。
1969年 日本芸術会員となる。
1988年 文化功労者
1989年 死去。

 主な収蔵美術館

そごう美術館
大村コレクション
北里研究所
八王子市夢美術館
東京国立近代美術館
東京都現代美術館
北海道立函館美術館
長野県信濃美術館
京都市美術館

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